奈良大学博物館 令和5年度企画展
『富山市・長松山本法寺蔵「法華経曼荼羅図」の世界Ⅱー描かれたものがたりー』
長松山本法寺(富山市八尾町)は、鎌倉時代に創建された歴史ある寺で、江戸時代には富山藩主前田家の手厚い保護を受けていました。本法寺所蔵の「法華経曼荼羅図」(重要文化財)は、鎌倉時代末期制作で、縦約190㎝、横約130㎝の大幅で、かつ二十二幅で一具という類例の無い作品です。『法華経』二十八品の内容が詳しく描かれています。第一幅のみは補作で江戸時代制作(富山市指定文化財)、第二~二十二幅は鎌倉時代の制作で、国の重要文化財に指定されています。
今回の企画展では、第三幅、第四幅、第五幅、第六幅、第八幅、第九幅、第十二幅を高精細で撮影し出力した原寸大の複製7点を展示します。
曼荼羅といえば、大日如来を中心とした仏教世界を描く密教的な図像を思い浮かべますが、本法寺の「法華経曼荼羅図」 は、 『法華経』で語られるたとえ話がいくつもの場面に分けて展開され、人物の表情や身振りが豊かに描かれています。絵を一見しただけでは話のつながりが分かりにくい箇所は、場面を解説したパネルを添えて話の展開を分かりやすく展示します。
今回の展示では、経典の内容だけではなく、経典にはない龍の大激闘などの仏教のものがたりが描き込まれている点に注目します。 『法華経』の注釈書に由来するような内容や説教の際にお経の内容を大げさに脚色してしまったかのような表現も見られます。美術史はもちろん、説話文学や宗教史、歴史学などさまざまな立場から関心を寄せていただけます。