田原本町の住宅地に居を構える藤井さん夫妻。築60年、四間取り(田の字形住宅)の伝統的な日本家屋だ。1階部分のスケルトンリノベーションを行い、家の本質改善に取り組んでいる。
代々受け継がれてきた住まいには、太い大黒柱や梁、職人による建具など現在の住宅にはない魅力がある。ただ、耐震強度の不安や冬の寒さ、現代の生活には合わない間取りなど不便な部分も多く、これからの暮らしを考えるにあたり不安を感じていた。「建て替えも検討しましたが、古き良きものを活かし、今を快適に過ごせる旧家リノベーションに決めました」と藤井さん。目指すのは、構造上の問題と不便さを解消し快適で安全な住空間だ。
耐震性は貫構造の耐力壁を効率的に配置し、大地震にも耐えうる強度を持たせる。また、省エネ基準を上回る窓を採用し気密性をアップ。土壁を残しながら床下や壁に断熱材を入れることで家の中の温度差を解消する。
応接間と台所があった東側は木の雰囲気を残すモダンなLDKで、生活動線が改善されコンパクトな生活が可能に。また、四間取りの2室分を松の梁と合わせ松のフローリングに変更。引き込み式の太鼓障子で庭が全貌できる広々とした居室となる。「大好きな庭を見る暮らしがしたかった。冬の寒い日も庭を眺めてゆったりと過ごしたいですね」と藤井さん。夫婦の思いが詰まった、新たな住まいの完成は目前だ。