〈奈良市〉SETRE日帰りツアー 第3回 Story Trip 2026.2.28 やーさん ならまちに息づく和紙の記憶― セトレならまちで紡ぎ、福西和紙本舗と出会う〝手仕事の旅〟 2月24日、ホテル「セトレならまち」で第3回目のStory Tripが開催されました。〝奈良を紐解き奈良を創る〟をコンセプトとする同ホテルは、奈良の歴史・自然・文化・食・芸術をハードとソフトの両面で体現していることで知られています。 その奈良の歴史が紡いできた数多くの物語を未来へつなぐ一環としてのイベントの一つがこのStory Tripです。今回は、同ホテルの「セトレならまち匠室」の障子にも張られている希少な和紙を制作している大和宇陀紙選定保存技術保持者の福西正行氏を招いて手漉き和紙体験と、書道家の秋森和晃氏の指導による書のワークショップを行われました。 楮(こうぞ)100%! 思い思いの色模様を染め込んだマイ手漉き和紙 まずは参加者30人が3班に分かれて、①手漉き和紙、②書のワークショップ、③ホテル内の「発酵足浴」「ビオヤード」「ライブラリー」などで過ごすフリータイムをそれぞれに体験しました。 手漉き和紙は、ホテル玄関前に設置された楮液の水槽(紙漉き舟)に簀桁(すげた)をくぐらせ、色繊維を挟んで今一度楮液を重ね、干し板で乾かすという流れ。A3大1枚かハガキ大8枚の漉き枠を選んで、好みの彩色を施す過程を、匠の手際よい指導により、皆さん初めてとは思えない所作でこなされました。 自由奔放な筆遣いで伸びやかに翔ける干支の「午」や「馬」 紙と言えば書、ですし、奈良は墨や筆の発祥の地。その墨と筆を使って今年の干支の一字を書く体験も楽しみました。今年の干支は「午(うま)」。その「午」や「馬」を、秋森先生の「自由に伸びやかに書いてみましょう」の言葉を受けて一人3枚ずつ書きました。 筆を持つのは中学校以来という方も、先生の手本を参考に自分らしさを表現。初めに穂先を崩しておいて掠(かす)れを出したり、逆筆で書き始めて力強さを出したりする技に加え、用意された金色墨汁を黒墨の穂先に少し含ませて華やかさを演出できました。最後に名を入れ、「人生一楽」の落款を押していただいて、それぞれにステキな作品が仕上がりました。 「発酵足浴」「ビオヤード」「ライブラリー」「ドリンクフリーラウンジ」など、時間がゆっくり流れる空間 体験待ちのフリータイムも、ホテル内に設えられた「発酵足浴」「ビオヤード」「ライブラリー」「レコードルーム」「屋上テラス」などで好きなように過ごす方、「ドリンクフリーラウンジ」で飲み物やクッキーを調達して語らう方々など、それぞれに自分時間を愉しまれていました。 発酵足浴発酵足浴匠室 八代目・福西正行氏の「和紙の歴史や裏側」トークに聴き入る 福西氏は奈良県吉野郡吉野町窪垣内地区という水と空気のきれいなところで、江戸時代から8代にわたって紙漉きを伝承している方です。その歴史と紙漉きの行程や和紙の特長などについて、スライドを示しながらのお話がありました。 なかで参加者を詠嘆させたのは、国内外の国宝の修復(掛け軸や版画などの裏打ち)には「吉野手漉き和紙」が使用されているということ。それは楮100%のものをアルカリ性の白土(石灰岩)と混ぜることで中和するから、何百年もの年月の耐久性が得られるのだということでした。 また、同地区での紙漉きの起こりは壬申の乱に遡り、大海人皇子(天武天皇)が伝えたとのいわれや、国栖地区には犬を飼わない風習が今も残るわけなど興味深い話も伺えました。 極寒の中での作業も多く厳しい仕事ですが、八代目の後は息女の福西安理沙さんが継がれるという話に、皆さま安堵の表情でした。 昼食は「奈良の恵みランチコース」に舌鼓 お待ちかねの昼食は、「奈良の恵みランチコース」です。実は同ホテルの人気の一つはお料理。地産地消をモットーに、肉や野菜、米から調味料に至るまで、シェフが産地まで足を運んで自分の五感でチョイスした食材を使っています。食材それぞれがストーリー性を持ち、いただく者はその情景までも味わうことができる組み立てです。 「Hors-d’œuvre~旬彩~檜箱に詰めた大和の旨み9種盛り合わせ」に始まり、「Soupe~芳醇~」、「Poisson~潮騒~」、「Viande~まほろば~」と続いて、「Dessert~一期一会~」まで、ワインや日本酒など好きな飲み物を傍らに、奈良県の津々浦々をトリップしてランチタイムを堪能しました。 ホテル周辺の耳寄り解説付きガイドツアー スタッフによるオプションサービス ランチ後は、福西氏一家により仕上げられた手漉き和紙作品や書を手土産に解散の予定でしたが、〝折角の奈良〟だからのオプションが付きました。奈良ホテルの元副総支配人で2月から同ホテルの顧問となった辻利幸氏が、ホテル周辺を小一時間案内してくださることに。時間に余裕のあった希望者10数名が参加されました。 辻氏は、奈良の最老舗料亭の菊水楼から著名人の利用が多かった名物宿の江戸三を抜け、奈良公園の浮見堂、紅白の梅が満開の片岡梅林、春日大社の参道をおん祭の若宮様御旅所へと案内、随所でそのスポットにちなむ興深い話を挟み込まれました。そのたびに「え~、知らなかった~!」「ぅわ~♪ そうだったんだ!」などと笑いや歓声が上がりました。 奥は春日大社 一の鳥居奥は奈良ホテル片岡梅林(奈良公園)御旅所前で ちなみに御旅所では、閉められた柵の「埒(らち)」、鼉太鼓(だだいこ)打ちながら儀式の「打ち合わせ」、若宮様が芝の上に居らして芸能見物するから「芝居」と、現代も使う言葉の語源説明がありました。そういった辻氏の名案内ぶりに「辻さんは私の〝推し〟になりました」と大喜びし、「またお水取りにも泊まりに来ます」と言ってホテルを後にされた方もいました。 参加者からは「木、石、紙を使ったナチュラルな空間の居心地の良さの上に、贅沢な体験ができた」「何度か来ていますが、いつも食事が最高!」など、満足しきった感想が聞かれました。田中のりこ総支配人によると「お客様に喜んでいただけて何よりです。年に4回ぐらいはこういった企画を予定したいと思っています」とのこと。奈良の深掘りと美味満喫のツアー、次回も楽しみですね。