新型コロナウイルスはなかなか終息を迎えそうになくて我々の生活も様変わりした。外出制限が続き、宿泊業や飲食店にとっては厳しすぎる現状だが、テイクアウトをするなど頑張っている店が多い。

 今回、テイクアウト特集を組んでみて、店の方のご苦労に触れた。何とか食材を無駄にしないように、お店を忘れずにいてもらうために、店を維持するために、でもクオリティーは保ってと、大変さが伝わってくる。客側は、普段食べられないテイクアウト弁当を食べられてありがたい。

そんなテイクアウトのご紹介をもう一つ。吉野のUさんから「矢田寺の北僧坊さんが、あじさいカレー頑張っているので何とか応援してほしい」と連絡があった。あじさいカレーは毎年6月、アジサイで有名な同寺で、参拝者に有料メニューでふるまっているもの。人の根源欲求である「食」に力を入れようと、料理が得意な住職のお母様の敦子さんが、丸一日かかって、何種類ものスパイスを使って煮込んだカレーだ。

以来、毎年この時期にカレー目当てに何度も来る常連さんたちも増えてきた。そんな折の今回のコロナ騒動。入山を中止せざるを得なくなった。

敦子さんは、こんな時だからこそ目を向けることがあると言う。「何でも容易に手に入る世の中になったけれども、それによって手に入らなくなったものもあります。それは「誰かを思い、ありふれたもので丁寧に美味しく作ること。食料としての食品ではなく一時でも心が満たされるようなご飯を提供したい」と例年6月だけのカレーを4月からスタート、食で幸せになってほしいと宅配を受けている。試行錯誤して、カレーは一人前300gが真空パックに入っているので、冷蔵庫や冷凍庫で保管しやすい。

Uさんはそれを福島県浪江町の友人に13人前送ったという。福島第一原発で避難していたが、やっと我が家に戻ってこれた友人に向けて。

誰かのことを思って作られたカレーを誰かのことを思って送る。とってもすてきだ。そして、こういう時だからこそ、身近な人の存在を大切にしたい。

コロナウイルスは大きな打撃を我々にもたらしたけれども、様々な気づきも得ることができた。無駄にせずに次に生かさなければ。

なお、矢田寺北僧坊のカレーは1パック700円。送料別。申し込みは電話0743-53-1531