知り合いの営業マンが経験談を話してくれた。コロナ禍の中、どうしてもお客様のお宅を訪問しなければならず、行って玄関の扉が開くや否や、頭から足の先まで除菌スプレーをかけられてびっくりしたという。「まあ仕方ないですよね」と彼女は笑っていた。そんな彼女をすごいなと思った。「コロナ被害」は医療従事者からは聞いていた。家に帰ると「お父さんは帰ってこずに病院で寝て」と言われたり、看護師の子どもさんを保育所で預かってもらえなくなったり。他府県の話と思っていたが、奈良県内でもそういうことが起こっていた。 

それだけ皆、過敏になっている。特に高齢者にとってはもし自分が罹ると取り返しのつかないことになるかもしれないという恐怖が大きいのだろうと思う。

それでも、恐怖と疲労の中、寝る間も惜しんで私たちのために頑張ってくれている医療従事者の方々をはじめ、警察、消防・救急隊、駅員さん、新聞配達員の皆さんに至るまで、変わらず私たちが生活を続けられるために働いておられる皆さんには頭が下がる。理不尽な嫌悪は慎むべきだろう。

嫌ならせめて丁寧にお断りするなどの配慮がほしい。 自分もイライラするが、皆イライラしているんだから。

頑張っている人と言えば、コロナ禍で、生活に困窮している方々に食糧支援をする事業に参加したが、たくさんのお礼状をいただき、読んでいて胸がいっぱいになった。やはり母子家庭が多く、コロナで仕事がなくなりギリギリの生活を続けておられる人、休校中の子どもを置いて昼も夜も掛け持ちで仕事に行かなければならない人など、皆さん本当にご苦労されていた。「今回の趣旨もちゃんと子どもに言い聞かせました」「今度は自分が人を支援する側になりたいです」といった言葉が心に刺さった。

でもつらいことばかりでもない。リモートワークのお陰で反抗期の子どもと話せるようになったとか、80歳を過ぎて初めてヨガに挑戦したなど、すてきな話も周りから伺った。私たちはぜひそんなすてきな話を探し、伝えるようにしていきたい。

ラグビーワールドカップで活躍した世界のスーパー選手がこのたび何人も日本のトップリーグチームに入った。報道では「日本のおもてなしや思いやりに感動したからぜひ日本でプレーしたいと思った」と。イライラするときほど、そんな心を思い出そう。明日はいいことがありますように。