〈開催レポ〉奈良好きによる奈良好きのためのマニアック奈良市内ガイドツアー第9弾

知られざる奈良を巡る人気ツアーならではのコース

アジールさんぽ「夏の月ヶ瀬と茶畑さんぽ」
8/11(月)・12(火) 8:00~13:00  

ホテルアジール・奈良が送る、奈良を体感するおさんぽ企画!
第9回は、「夏の月ヶ瀬と茶畑さんぽ」と題し、ちょっぴり足をのばして江戸の文化人もあこがれた、“奈良の奥座敷”月ヶ瀬を巡る、みどり香る夏の旅が8/11(月)・12(火)に開催され、記者は11日に同行しました。
かつては媒染剤となる鳥梅うばいの生産地として栄え、今も梅の咲く頃には訪れる人の目を楽しませる月ヶ瀬梅林。奈良市月ヶ瀬梅の資料館を訪ね、茶畑さんぽ&利き茶体験で、近年お茶の生産地としても盛り上がりを見せる月ヶ瀬の食と歴史をたどりました。

奈良市の〝奥座敷〟月ヶ瀬は市街地から約50分、山里を巡るのどかなバス旅

ホテルアジール・奈良に8時集合、送迎バスに乗り込み、奈良市の〝奥座敷〟月ヶ瀬への旅は始まりました。東大寺大仏殿の裏手から柳生方面への分岐を進むと、早くも先ほどまでとは打って変わって緑深い里山の景色が目に入るようになります。
浄土庭園の美しい忍辱山円成寺、田園風景が広がる大柳生を過ぎて柳生にさしかかり、『鬼滅の刃』で人気スポットとなっている「一刀石」の説明などを受けながら、ほどなく月ヶ瀬へ。五月川(名張川)にかかる月ヶ瀬橋を渡った右手が奈良市月ヶ瀬梅の資料館でした。

奈良市月ヶ瀬梅の資料館で月ヶ瀬を学ぶ
烏梅生産のための梅林が名勝・月ヶ瀬梅渓に

資料館では、月ヶ瀬梅渓保勝会理事長の窪田良蔵氏から、月ヶ瀬の主要産業であった「烏梅」「梅林」の歴史、麻織物奈良晒ならざらしの話をうかがいました。
月ヶ瀬の「烏梅」は、梅の加工品で媒染剤・発色剤として紅花染や紅用で、そのために梅の木が植樹されました。しかし明治時代以降、化学染料が出回ると急速に衰退。梅は保勝会によって甦るも「烏梅」の生産は、現在では月ヶ瀬尾山の中西さん1軒だけが古来の作り方で黒梅を焼き続けているとのこと。
ちなみに東大寺二月堂の修二会(お水取り)で観音様を荘厳するのりこぼし椿の造花の赤い花弁は、この烏梅で発色されるとのことです。
また月ヶ瀬では「奈良晒」も江戸時代から一級品として伊勢神宮などへの納品、また武士の裃などへの需要が高く、紡織が盛んでした。が、これも時代と共に需要が減少、現在は奈良晒保存会によってその紡織技術(奈良県無形文化財)の伝承を図っているそうです。

月ヶ瀬の広報マン&ウーマンの資料満載
斎藤拙堂、頼山陽、富岡鉄斎、奥原晴湖らの書画・書籍が大集結

資料館の2階は「月ヶ瀬資料展」。江戸後期の儒学者・斎藤拙堂は頼山陽の添削を受けた紀行文『梅渓遊記』や『月瀬記勝』などで、月ヶ瀬梅渓の名を全国に広めたそうです。ちなみに頼山陽は『梅渓遊記』に寄せた批評文で、拙堂がこの旅行に誘ってくれなかったことを遺憾千万と著し、翌年観梅に訪れ、その話を門人が記したとのことです。
江戸後期から大正の文人画家・富岡鉄斎は、頻繁に月ヶ瀬を訪れては梅渓の美しさを描き残しています。また、江戸後期から明治の女流文人画家の奥原晴湖も月ヶ瀬へ来遊し、多くのスケッチを描いたとのこと。関東で活躍していた人ですが、木戸孝允の墓参を口実に月ヶ瀬を訪れたというエピソードがあります。
2階の外側は回廊テラスになっていて、周囲の眺望を楽しめます。3階は展望台。すぐそばに赤い月ヶ瀬橋が架かる雄大な流れの五月川を一望できました。

製茶工場と茶畑を訪ねて利き茶体験

1957年から茶づくりをしているというたつみ茶園(月ヶ瀬長引)を訪ね、製茶工場の見学をさせていただきました。
オフシーズンでしたが、大和茶宣伝大使でもある巽直弥代表の丁寧な説明は、まるで摘み取られたばかりの茶葉が、そこで実際に蒸し→冷却→粗揉→揉捻→精揉→乾燥→乾燥の過程を踏んでいるかのようでした。 新芽の硬軟を見極めた温度や時間・強さの管理もさることながら、茶畑での摘み取りから工場で蒸しに入るまでの数十分が勝負とのこと、おいしい大和茶ができる陰には神経が磨り減るような努力や苦労があることを知りました。
雨が心配された日でしたがお天気が持ちそうなので茶畑へも案内していただきました。5月の新茶に続き6月の二番茶の収穫後に育った茶葉が夏の日差しを浴びて濃い緑の畝を連ねていました。茶の木は一般に多い千鳥畝ではなく一条植えで、その幹は太くがっしりとしていました。何と知事賞受賞のお茶は、その茶畑のものでした。
巽さんによると、「お茶は、やさしい気持ちやゆっくりとした穏やかな時間を届けるもの」という思いで栽培しているとのことです。

利き茶体験で奥深いお茶の世界を垣間見る

茶畑見学の後は、月ヶ瀬の魅力発信基地「ロマントピア月ヶ瀬」に移動、たつみ茶園さんによる利き茶体験を楽しみました。
水出しの3種が順番に振る舞われ、参加者はそれぞれに口に含んでは味わいました。同じ茶葉の新茶、二番茶、オリジナル茶など、旨み成分が勝つもの、程よい渋みが感じられるもの、フルーティーな爽やかさが楽しめるものとあり、それぞれに味わいがありました。
その利き茶体験では、同ツアー限定の特製お茶菓子が振る舞われるといううれしいサプライズも。ホテル近くの船橋商店街にあるCafe & Bake Allon bienさんコラボのお茶菓子は、たつみ茶園さんのお茶を使ったフィナンシェと定番カヌレで、小腹の空きかけた参加者にありがたい虫養いにもなりました。
予定に合った龍王の滝見学は、前日の雨で足元が悪く、中止となりましたが、参加者は月ヶ瀬の知らなかった魅力が大いに堪能できたと大満足で車上の人となりました。梅の時節に訪ねたいという方がほとんどでしたので、その折にはぜひ龍王の滝へお寄りください。幹線道路から苔むす岩肌伝いに徒歩で数分の所ですから。

ホテルで奈良特製『月ヶ瀬御膳』にて昼食

帰館後、ホテルアジール・奈良特製の『月ヶ瀬御膳』にて昼食をいただきました。
「お茶」をテーマに、奈良と月ヶ瀬を感じられる特製の品々が一品ずつ供され、参加者の皆さんは「御膳とあったから、一度にお膳で運ばれてくるぐらいのものかと思ったら、立派なコース♪ 旅企画も素晴らしかったし、あの料金では赤字じゃないですか?」と、舌鼓を打ちながら破顔の笑みでした。

まだまだ続くよ、奈良の深掘りツアー、次回は冬。お楽しみに

奈良検定を持ったホテルマネージャーやスタッフ、そして奈良好きを極めた「なら・ボランティアガイドの会 朱雀」理事兼奈良まほろばソムリエ企画による奈良推し全開ツアー。
大仏や奈良公園以外の観光スポットを探している方、春夏秋冬の奈良を楽しみながらちょっと歩きたい方、さらに奈良のグルメも味わいたいという方にオススメの旅。1班5~8名の少人数でガイドさんの話が聞ける、ゆったりとしたツアーです。
ネット検索でも見つからない、奈良生まれで奈良育ちでも知らない奈良、いつもとは違う奈良のおもしろい場所、すごいところを巡るミニ旅にいざいざ。

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