第21回山寺おしょうのお悩み相談|定年退職して家に戻ると居場所がありません

【お悩み】定年退職して家に戻ると居場所がありません

65歳男性です。単身赴任ばかりの人生でしたが、働くことで家族を養っているという自負のもとに頑張ってきました。でも定年退職して家に戻れば、私の居場所がありません。
妻と、結婚せずに家に居ついている娘。妻はずっとパートに出ていて、私が戻ってきたことでとても厄介に感じているようです。よくある話なのですが、自分の身に降りかかると、なんだか今まで頑張ってきたことがばからしくなってきます。同じような悩みの本を読むと余計疲れるというか、現実を受け入れられないというか…。再び仕事を探すしかないようですが、心のモヤモヤをどうしたらいいのでしょうか。
(はじき出された枝豆)

大切なのは、他人を変えようとするより自分を変えることです。
決してご自分の人生を否定しないでください。

単身赴任お疲れ様でした。やはり単身赴任していると、夫婦の間が遠くなるという過ごし方にお互い慣れてしまって、急に同じ家で暮らしても距離感がつかめないのは珍しいことではありません。
まず大切なのは、他人を変えようとするより自分を変えることです。そして、決してご自分の人生を否定しないでください。「何のために頑張ってきたのか」「ばからしい」と思う心は、自己否定から生まれます。まずは自己肯定から始めてください。家庭を支えるために働き続けたことは、何より尊い善行であり徳を積む行いです。
お大師様は「善を行ずれども果を求むるなかれ 果を求めれば善もまた悪くなり」と説かれました。善い行いをしても、その見返りを求めたり「これだけ家族のために尽くしたのだから」と思ったり口にしたりすると、その善行は苦しみの元になります。ボランティアも「してやっている」と思えば、それは本当の善行ではなくなってしまうのと同じです。「自分はやるべきことを果たした」と受け止めてください。
またお便りからは「結婚せずに」「妻はこうあるべき」という固定観念も少し感じました。ご家族にもそれぞれ事情や思いがあります。 まずは家族を理解しようとする姿勢が関係を変える第一歩になるでしょう。
もっとも私もそうですが、家族同士で本音を話すのは難しいものです。そんな時は知人に間に入ってもらう、手紙を書くなどの方法もあります。固定観念を外して家族のために自分ができる家事などをやってみるのもいいです。相手への接し方が変われば、返ってくる反応も少しずつ変わります。仏教ではこれを「縁起」と言います。
さらに一度、ご夫婦それぞれの家系図を作ってみることをお勧めします。自分たちのルーツを知ることで、家族の姿が違って見えてくることがあります。ご先祖様とのご縁に思いを寄せ、供養することも大切です。
「厄介だ」と思われる人には、頑固で妥協しない、批判的で理屈っぽい、自己主張が強すぎる、細かいことにこだわりすぎる、といった共通点があります。ご自身を振り返り、そのようになっていないか見つめることも大切でしょう。
定年は新しい人生の始まりです。家族との関係を見つめ直そうと悩まれていること自体が、とても尊いことです。そして家族だけでなく、ご自身の楽しみや生きがいにも目を向け、新しい心地よい距離感を築いてください。
回答者

大塚 知明 師

真言宗醍醐派妙法寺(大師山寺)住職
当山派修験大先達
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