メディカル最前線vol.11 西の京病院 肛門外科

おしりのSOS、すっきり解消! 日本人の3人に1人は“じ”主さん

「日本人の3人に1人は痔に悩んだことがある」といわれるほど、痔は身近な病気だ。おしりを診察される恥ずかしさや治療に対する不安から人知れず悩み、市販薬などで凌いで受診を先延ばしにし、逆に悪化させている人も多いという。肛門外来を設け、的確な診断と治療で患者の苦痛を軽減、笑顔にしている西の京病院の岡内 博先生に、病気の正しい知識と最先端治療について話を伺った。

痔は大きく3タイプ

痔の種類は大きく分けて「痔核」「裂肛」「痔瘻」の3タイプがある。痔核は男女共に半数を占め、男性には痔瘻が、女性には裂肛が多い。  治療法は、規則正しい排便習慣や食生活の改善などの生活療法が基本となる。症状が軽い場合は、外用薬(座薬・軟膏)や内服薬を用いる薬物療法を行うが、病状が進んでいる場合は手術療法を行う。

❶痔核(いぼ痔)

最も多いタイプで、おしりの血行が悪くなり、血管の一部がこぶ状になったもの。初期は出血が起きる。歯状線より上(直腸)にできたものを「内痔核」、下(肛門)にできたものを外痔核と呼ぶ。

治 療

●内痔核…初期の痛みや出血・腫れなどの急性症状は、薬や入浴でうっ血や炎症が取れれば収まる。が、痔核が脱出し、それが戻りにくくなったら手術が必要。手術には結紮切除術、硬化療法等がある。

●外痔核…血栓(血の塊)ができ、腫れて痛む。薬で治るが大きく痛みの強いものは血栓を取り除くか手術する。

硬化療法は1泊2日、 結紮切除術は4~5日の入院です。

❷裂肛(切れ痔)

硬い便の通過で肛門の皮膚が切れたり裂けたりしたもの。排便時に痛みがあり、少量の出血がある。進行すると排便後にも痛みが続く。痔瘻になったり、肛門が狭くなったりすることもある。手術には括約筋切開術や肛門皮膚移動術がある。

❸痔瘻(あな痔)肛門周囲膿瘍

肛門の奥から細菌が入り、肛門周囲が化膿したもの。周りに膿がたまり、それが外に流れ出るトンネルができてしまった状態で発熱や痛みを伴う。痔瘻は薬では治らず、化膿を繰り返すうちにがん化するものも。手術には瘻管開放術、瘻管切除術、痔瘻結紮療法等がある。

市販薬で治ることも期待できるが、肛門や直腸、結腸のがんのほか、クローン病や潰瘍性大腸炎など、見逃してはいけない病気の可能性もあるので、専門医院で早めの受診を。

予防と再発防止

①規則正しい排便習慣
食物繊維や水分をとり、便意を我慢せず、いきみは3分以内。香辛料やアルコールを控える。

②おしりを清潔に
温水洗浄式便座を使う。水圧弱め・ぬるま湯で、洗浄後はよく乾かす。

③おしりをいたわろう
体を冷やさず、お風呂で温まり血行をよくする。過労やストレスを避ける。長時間同じ姿勢をとらない。

*座りっぱなし、立ちっぱなしは肛門がうっ血しやすいので2時間おきにストレッチなど、血行を改善しよう!

ひと言で「痔」といってもどのタイプに当たるかは診ないとわからず、治療法も異なります。がんのような病気が隠れていることもあります。早期に治せば、それだけ悩みも短期間で済みますよ。

肛門外科 岡内 博 医師

消化器外科、一般外科

取材協力/医療法人康仁会 西の京病院(メディカルプラザ薬師西の京事務局/奈良市六条町102-1
問い合わせ/TEL.0742-35-2219
https://www.nishinokyo.or.jp/

*yomiっこ2019年2月号に掲載の情報です

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