【お悩み】終末の話をしようとすると母が嫌がります。
母にお墓をどうするか、人生の終末をどう過ごしたいかといったことを聞こうとするとすごく嫌がります。この前姉妹が集まったのでいい機会だと思って切り出そうとすると怒りだしました。元気なうちに聞いておきたいと思うのですが、どう切り出したらいいでしょうか。
(大和郡山市 T)
良い思い出をたくさん作りましょう
結論から言うと、無理に聞こうとせずに、思い出をたくさん作ってあげてください。人は亡くなった時にどれほどの人にいい思い出を思い出していただけるかだと思います。
先日、私の知人が59歳で末期がんで亡くなり、お別れ会をしました。彼は生前からうちのお寺によくお参りにきていました。仏教の話を聞いて、一緒に般若心経を唱えては仕事の愚痴など吐いていました。私を師匠と呼んで慕ってくれていました。そんな彼から「余命宣告を受けたので相談したい」と連絡があり、病院に行きました。
彼は独り身で、どんなお葬式をするか、後のことはどうするか、「師匠に任せるよ」とのこと。「それなら亡くなった後にお別れ会をしよう」と提案し、彼の最期の挨拶を動画で撮りました。
8月に亡くなり、約束通り密葬をして遺骨をお寺でお祀りをして、6回目の7日逮夜にお別れの会を開きました。彼の友人、知人たちに声をかけていくと、予想を遥かに超えて、供花が50個、参列者は全国から100人を超えました。
来られた方はみんな、彼にお世話になった、彼のおかげで今の自分があると口々に話をしてくれました。思い出を語り、まるで同窓会のようなお別れ会でした。彼が生前周りの人のために尽くした結果だと思います。
供養とは、その人を思い出すこと、そして感謝することなのです。つまり残された人が健康で長生きしてその人のことを事あるごとに思い出すことが何よりの供養なのです。でも人はすぐに忘れるので、お仏壇を家に置き、遺骨をお墓に入れて、必ず思い出し感謝できるようにするのです。
お母さん自身が周りの人にいい思い出を残していけるように、お母さんを思い出してくれる人をたくさん作ってください。
またお金を貯めて、一緒に旅行に行きましょう。「こんなに頑張って仕事をして、育ててくれてありがとう」と感謝を伝えましょう。そうする中で、お母さんに幸せな終末を送ってほしいからと伝えれば、お母さんも喜んで答えてくれるのではないでしょうか。
また、人はいつどうなるかわからないのがこの世の常です。あなた自身の最期のことも考える意味で、お母さんとエンディングノートを一緒に作ってもいいかもしれません。お互いこれからどんな人生を送ろうか、どんな思い出を作ろうか、話し合ってみてください。
親子が離れて暮らし、知人と連絡しないなど、疎遠になる今日この頃です。良い思い出こそが最高の贈り物です。
回答者
大塚 知明 師
真言宗醍醐派妙法寺(大師山寺)住職
当山派修験大先達
当山派修験大先達
