先日、友人がカウンターの高級お寿司屋さんに一人で行った、という話を聞いた。彼女はもう70歳。いつ会っても毎日を楽しそうに生きている。「人間、一人で生まれて一人で死んでいくものよ」。さらりと言われ、思わず言葉に詰まった。
私はわりと寂しがり屋だ。家族に何かあったら、一人になったらどうしようと、不安になることが多い。だから一人で外食するにも、なぜかハードルを感じてしまう。昼ならカレーやパスタ、ステーキも一人で入れる。夜の懐石やフレンチのコース、入れなくはないが、一人じゃつまらないので気が進まない。
一人で食事を楽しむ余裕が、まだ私にはない。取材であれば一人でどんな店にも入れるのに、仕事でなければ一人は気が進まないのはどうしてだろう。役割があると安心して、役割がないと不安になる。そんな自分にも最近やっと気づいた。
その友人は旅行も一人で出かける。私も出張ではどこでも一人で行くが、それは目的があるからだ。何も決めずにふらっと一人旅をするのは難しい。最近は旅先で一人旅の女性をよく見かける。カフェで本を読み、景色を眺め、ゆったりと時間を過ごしている姿に、つい目がいく。
友人は一人旅のコツも教えてくれた。無理をしないこと。予定は一日一つか二つ。荷物は最小限に。直感で動くこと。日々体力をつけること。そして行き先は誰かに伝えておくこと。
別の友人は都会の公園で一人キャンプをする。自転車に道具を積み、コーヒーを淹れてまったりした後、夕方には帰るという。みんな大人だなあ、と思う。そういう私はすでに人生後半なのだが。
一人で行く勇気がないのだと思っていた。でも、そうではないのかもしれない。「人は一人で生まれ、一人で死ぬ」。あの日、友人がさらりと言ったその言葉に、私はまだ戸惑っている。けれど、いつかその言葉を自然に受け取れる自分には、少し近づいてみたい。
よみっこ編集長 朝廣 佳子
