Boze数珠繋ぎ#263|興善寺・森田 康仁 師

若いお坊さんへのリレーインタビュー

「Boze数珠つなぎ」

#263

Profile

浄土宗 法輪山 興善寺 副住職

森田 康仁 師

もりた こうにん

1998年奈良市生まれ。26歳
佛教大学仏教学部仏教学科及び同大学院修士課程修了、博士課程依願退学、現在興善寺副住職。

皆様の拠り所となる僧侶を目指します

奈良市のならまちにある興善寺で副住職を務めております。
また、本年12月に行われる「H1法話グランプリ」実行委員として準備に携わっています。超宗派の僧侶が法話を披露し「もう一度会いたいお坊さん」のグランプリを決めるこの大会に、今回も多くのご応募をいただいております。

どの方も“伝えたい”という気持ちがすごくあふれていて、12月6日の本選がとても楽しみです。

さて、興善寺は16世紀に慶誉上人によって浄土宗の寺院として開創されました。その前身は元興寺の奥の院とされております。昭和37年にご本尊の阿弥陀如来立像から法然上人の直筆のお手紙が見つかり、重要文化財になっております。
私はここで生まれ育ち、幼い頃は祖父や父のようなお坊さんになりたいと強く願い、七夕の短冊に書くほどでした。それがだんだん敷かれたレールを歩みたくないと思い始め、特に別の夢ができたわけでもなく、煮え切らない反発心だけがずっとありました。
「森田はお寺があるからええやん」。
中学で入部した科学部で、同級生と将来について話をしていた時にそう言われました。その時、顧問の先生が「それは森田が選ぶことやから、絶対ならなあかんもんとちゃうで」と言ってくださったんです。お寺を継ぐことも君個人が決めていいんだと言ってくれた先生は初めてで、少し前向きに考えられるようになりました。
高校は浄土宗に関係する大阪の上宮高校に行きました。これがよかったと思います。「宗教」という科目があって、法然上人やお釈迦様のエピソードなどを教えていただきました。仏教の考え方を知るにつれ、強く関心を持つようになりました。
大学では仏教の根本をより知りたいと思うようになり、古い文献に基づいたお釈迦様の思想に惹かれていきました。進めるうちに、研究の上での仏教と、身近な僧侶が実践している姿との違いが気にかかるようになりました。 ある時「初期の仏教が理想的なんだ」と、少しかじってわかったように話していると、友人から「それが正しいとして、俺らみんな実践できるか?」と言われたんです。理想の教えを貫くとなると、俗世間から離れて別の生き方をしなければならず、誰にでもできることではありません。改めて「南無阿弥陀仏と唱えれば皆が救われる」という法然上人の教えが万人救済の教えと言われる意味を実感しました。
幸いなことに、大学では研究だけでなく、浄土宗の布教を勉強する傳道部にも所属しており、法然上人の念仏の教えを共に学ぶ仲間がいました。理想を謳う私を鋭く指摘してくれるのはいつも友人です。このご縁が私を導いてくれたと思います。その後、大学院まで進みましたが、大学での研究より、教えを継承していく僧侶の道を選ぼうと自分の中で決心し始めていました。
修士課程を終えた後、縁あってハワイ・マウイ島のラハイナにある浄土宗のお寺に3か月住み込みでお手伝いをさせていただくことになりました。ご住職や奥さん、檀信徒の皆さんに本当によくしてもらいました。日本から出稼ぎに来た人たちの拠り所としての歴史があるお寺で、今も地域のコミュニティーに欠かせない場所となっています。日本から離れた環境は自分にとって興善寺のことを前向きに考えるきっかけになりました。
2023年4月から7月まで滞在する中で、ハワイでのお盆を経験しました。コロナで休止・縮小していたお盆の行事がこの年に復活して、島中の寺院で盛大な盆踊りが行われました。立派なやぐらが組まれ、全国各地の盆踊り音頭が流れます。ラハイナでは海への精霊流しも幻想的でした。
ところが私が帰国した1か月後の8月8日、このラハイナで大規模な山火事が起こりました。幸いご住職たちの命は無事でしたが、お寺はすべて燃えてしまいました。何かできないかと募金箱とメッセージ帳を自坊に設置しました。仏教には無財の七施という施しがあり、その中に「言辞施」というものがあります。思いやりのある優しい言葉をかけることで自他ともに幸せな果報を受け取ることができます。
お檀家さんだけでなく、興善寺に立ち寄った修学旅行生や外国の方々をはじめ、多くの方が感謝や応援のメッセージを書いてくださいました。それらをラハイナに送りましたが、まず何より私自身がメッセージの数々にとても励まされました。よろしければ皆様も言辞施ごんじせをやってみてください。
まだまだ未熟な私ですが、目指すのは誰でも話しに来てくれる、身近な僧侶です。年を取るにつれ、より近しい存在に、皆様の拠り所となりたいです。
ラハイナの盆踊り風景

H1法話グランプリ

令和7年12月6日(土)
会場:なら100年会館
チケット申し込みや詳細はこちら

興善寺での体験

写経(浄土宗の仏説阿弥陀経)

事前予約
奇数月の第1日曜 2,000円
紺紙金泥の形で写経を行う

聞き手:朝廣佳子

基本情報 Basic Information
浄土宗 法輪山 興善寺/こうぜんじ
  • 住所: 奈良市十輪院町12
  • 拝観時間: 拝観自由(ご希望の方は事前にご連絡ください)
  • TEL: 0742-23-7007
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