メディカル最前線vol.21 西の京病院 眼科

【眼科】
早期発見・早期治療で糖尿病から目を守る
糖尿病の三大合併症「糖尿病網膜症」

症状が出たときは重症のことも! 怖い糖尿病網膜症

生活習慣の変化や高齢化が進み、40歳以上の4人に1人と急増している糖尿病。その合併症である網膜症は、糖尿病の症状が出ないときでも進むことが多く、放置したまま年数がたつと視力の低下や失明に至ることもある怖い病気だ。眼球の中の網膜血管は他臓器と異なる変化(※1)をするため、警鐘を鳴らす西の京病院眼科の伊藤 暁部長に、糖尿病網膜症について話を伺った。

●糖尿病網膜症

糖尿病の三大合併症は、神経障害・腎症・網膜症。身体中の毛細血管の障害が原因で発症するものだ。手足の神経や血管の異常で潰瘍や壊疽になることもある神経障害、腎臓の細い血管が蝕まれていき、透析治療が必要になる腎症、眼の網膜の血管が損なわれていく網膜症。いずれも早い段階での治療が大切だ。  糖尿病網膜症の初期は、無症状。進行すると眼がかすんだり、ものがゆがんで見えたりしてくる。

血糖コントロールができていても糖尿病暦が10年以上になると大抵の人が網膜症に。

●網膜症の進行(3タイプ)

■初期:自覚症状なし


単純糖尿病網膜症
網膜の毛細血管が瘤状に膨らんだり、点状出血・斑状出血を起こしたり、浮腫が見られることも。

■中度:自覚症状ほとんどなし


増殖前糖尿病網膜症
血管障害が広く進行し、出血や硬性・軟性白斑が増える。

■重度


増殖糖尿病網膜症(※1)
酸素や栄養素が不足することにより、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)が増え、新生血管や増殖膜ができ、硝子体出血、網膜はく離、緑内障などを起こす。また、網膜の血管から血液がもれ出て、視覚の最重要部「黄斑」にむくみが出る糖尿病黄斑浮腫を引き起こすことも。

【自覚症状】
・視力は著しく低下
・黒いものがちらつく
・ものがぶれて見える

●治療

【血糖コントロール】…食事療法・運動療法・薬物療法で血糖値のコントロールを図る。
【レーザー光凝固術】レーザー光線により、血管が詰まって流れないところや異常な血管瘤をなくして、進行を食い止める。
【硝子体手術】出血で濁った硝子体を切除・吸引、眼内をクリアにする。また網膜を引っ張っている増殖膜を切り取り、網膜はく離を治す。 

【薬剤】糖尿病黄斑浮腫の場合は、レーザー光凝固術や、硝子体手術のほか、抗VEGF薬やステロイド剤を注射する薬物療法を行う。

検査後すぐにも運転可能という、患者サイドに立ったスグレモノ検眼機!

●最新の検眼機器を導入

眼底検査は、通常瞳孔を開かせる散瞳薬を点眼して行うが、同院は超高性能な検眼鏡を導入。散瞳薬を使わずに、広角でより詳細、高画質・色彩豊かな画像で表現できるので、一度の撮影で病変をチェックできる。

散瞳薬の点眼不要、眼底の微小血管と血流障害の観察に有用な高性能広角検眼鏡

「糖尿病の疑いがある」「予備軍かも」の診断が出たら、血糖コントロール治療を始めると同時に眼科を受診して、網膜異常をきたしていないか眼底検査をしましょう。眼科の医療技術も日々目覚しく向上していますが、一旦悪くなるとなかなか戻れないので、治療は早いほどいいのです。生活のクオリティを守るため、目を大切にしましょう。

眼科部長
伊藤 暁 医師 (写真右)
日本眼科学会専門医、眼科専門医
【専門】網膜硝子体手術・難治性白内障

生島 徹 医師
【専門】緑内障

■問い合わせ/患者支援センター TEL.0742-35-2219
■取材協力/医療法人康仁会 西の京病院 TEL.0742-35-1122(メディカルプラザ薬師西の京事務局)奈良市六条町102-1
https://www.nishinokyo.or.jp/

*yomiっこ2020年1月号に掲載の情報です

戻る