編集長のメッセージ(10月)

8月の終わりに、社会情勢視察団のメンバーとして、南コーカサス地方を旅した。ソビエト連邦崩壊後の1991年に独立したアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニア。北にロシア、南にトルコとイラン、西に黒海、東にカスピ海を望む3つの小国だ。隣り合いながら民族や宗教、言語は大きく異なり、古くから争いの絶えない地域でもある。
「なぜそんな危ないところへ行くの」と周囲から言われたが、訪ねてみると、長い歴史と文化、民族性に彩られた実に魅力的な国々だった。
アゼルバイジャンとアルメニアは、ナゴルノ・カラバフ地方を巡り、長年紛争を繰り返してきた。1992年には「ホジャルの虐殺」が起こり多くのアゼルバイジャン系住民が犠牲になった。同政府の発表では民間人613人にのぼる。
30年以上対立してきた両国は昨年8月、トランプ米大統領の仲介で和平に向けた合意を発表。今は平穏を取り戻している。首都バクーには世界遺産の旧市街があり、丘の上には紛争で亡くなった人々を弔う「殉教者の小道」がある。火を神聖なものとしてきたアゼルバイジャンらしく、そこには天然ガスによる弔いの炎が絶えることなく燃え続けていた。
一方、石油や天然ガスに恵まれ経済発展も著しい。近代的な街には活気があふれている。日本では人気ドラマ『VIVANT』のロケ地としても注目され、日本人観光客も増えているという。 
戦争や紛争はニュースで見るだけではどこか遠い国の出来事に思える。しかしその土地に立ち、弔いの炎を目の前にすると、歴史の重さが現実のものとなる。ただ争いにはそれぞれの側から見た歴史がある。次回はもう一方の国、アルメニアで出会った人々の話を書きたい。

よみっこ編集長 朝廣 佳子

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