〈広陵町〉町にあふれる日常の“エモい”を切り取る公務員(#エモい町 広陵町/河野瀬 大貴さん)

《連載》自然と暮らす vol.186

#エモい町 広陵町/河野瀬 大貴さん

町にあふれる日常の“エモい”を切り取る

奈良県北葛城郡広陵町は奈良盆地の中西部に位置する人口約3.5万人の町。靴下の国内生産量日本一を誇り、古墳群と四季折々の植物が彩る県営馬見丘陵公園をはじめ、箸尾寺内町や百済寺などの文化財を多く有する“歴史と産業のまち”です。

そんな広陵町の魅力の発信をしているのが河野瀬大貴さん。同町の職員として働く傍ら、「#エモい町 広陵町」という名前でSNSを中心にプライベートでPR活動をしています。

夢を諦めようとした場所で出合った広報職

もともとメディアやクリエイター志望だった河野瀬さん。学生時代には描いた漫画原稿を出版社に持ち込み漫画家デビューを目指したと言います。

しかし志半ばで挫折。「未練を残さずきっぱりと夢を諦めたかったので、その真逆に位置していると考えていた公務員に就職しました」と河野瀬さん。

ところが、配属された部署は広報担当。「絵が描ける、デザインができるということで配属されたのか、それは不明ですが、結局夢見ていた職業に似通った仕事に就いてしまって。簡単に諦めさせてもらえませんでしたね(笑)」

広報の仕事では自らが持てる力をいかんなく発揮。町の広報紙『広報こうりょう』は全国広報コンクールに4年連続で奈良県代表作品に。2021年には写真部門 組み写真の部で全国2位の成績となる「入選1席」を受賞しました。

異動に左右されない、人と繋がる場所を求めて

広報担当5年目となり、異動も視野に入れ始めた河野瀬さん。内勤になれば、町に出る機会が極端に減る。広報活動を通して多くの町民と関わってきた繋がりが異動によって失われてしまうのはもったいない。そう感じるようになります。

そこで人に会う理由を作ろうと2021年、SNSアカウント「#エモい町 広陵町」を開設。インスタグラムを中心に広陵町を非公式にPRする活動を始めました。

アカウントでは、広陵町の何気ない風景を写真や動画で投稿。めんどくさがりという河野瀬さんは1日で1か月分の素材を撮影し、編集・加工作業は通勤時間を使いながら3日間で仕上げ、毎日投稿していきます。

内容は歴史的なスポットに自然公園、飲食店、地域のイベント・伝統行事など町に関わるあれこれを紹介。日常で目にする標識や看板も河野瀬さんの編集技術で物語性のある投稿に変身します。

行政マン×非公式が繋ぐ人の輪

町に暮らす人々の様々な想いを発信した「エモい町」の活動。デジタル発信だけにとどまらず、「広陵万博」と題して、SNSで紹介した本人たちによる想いを伝える場も設け、事業者と事業者、事業者と消費者を繋いできました。

また行政マンである河野瀬さんが橋渡し役となることで、行政と町民・事業者双方が素性を知った上で関わりあうことができるようになり、課題解決の実現につながっていると話します。

今では「広陵万博」を通じて知り合った仲間同士で事業コラボしたり、イベントを開催したりするようにもなっています。

“エモい町”は究極の身内ネタ

河野瀬さんにとって故郷である広陵町は “嫌いじゃないけど、好きでもない” 町だそう。特別愛着があるわけではないけど、日常の中でふと気になる風景がある。これを河野瀬さんは “エモい” と表現します。

エモい風景は、「究極の身内ネタ」として町の中で広がりを見せ、フォロワーも1600人超と着実に増えています。中には投稿された場所を特定して楽しむ人もいるとか。

2023年10月現在、500本以上のスポット・イベントを紹介。今後は1,000本を目標に投稿し、最後は1本にまとめたPR動画を映画館で放映することを目指しています。

みなさんの町にもエモい風景はありますか?

Profile

河野瀬 大貴

KAWANOSE DAIKI

広陵町生まれの28歳。

大学卒業後、広陵町役場に赴任し、広報担当を5年間務める。

2021年、異動を視野に入れ始めたことを機に同町の非公式広報アカウント「#エモい町 広陵町」を立ち上げ、SNSを中心に町の何気ない風景を発信中。

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