〈葛城市〉実は生産量日本一って知ってた?奈良県葛城市の名産「二輪菊」/西川 隆則さん 2025.8.5 鮎 奈良で活躍する“奈良もん” 今回は、茎に2つの花を咲かせる「二輪菊」生産者の西川 隆則さんをご紹介! わが国を象徴する花として長く日本人に親しまれてきた菊。秋を代表する花の一つで、9月9日の重陽の節句は「菊の節句」とも呼ばれ、菊の花を観賞したり、菊酒を飲んだりして無病息災や長寿が願われてきた。 葛城市では葛城山麓の気候風土が生育に適すると、各地で菊が栽培されており市の花にも制定されている。中でも1つの茎に2つの花を咲かせる「二輪菊」は、旧新庄町域で盛んに作られ、その生産量は日本一を誇る。 同市脇田地区で約50年花卉(かき)生産を行っている西川隆則さんは父子2代にわたって菊の生産を行う農家。現在は夫婦2人で二輪菊や小菊など数品種を生産している。 現在の菊畑は2.5~3平米の広さ。露地とネットハウスで栽培している。 二輪菊は品種の特性ではなく、一本の茎に次々と伸びてくる脇芽を一つずつ人の手によって摘み取る「芽かき作業」を繰り返して仕立てられたもの。手間と熟練した技によって作られるそれは、風情や趣があるとして、秋のいけばな花材として長く重宝されてきた。 しかし今、二輪菊に存亡の危機が迫る。時代が変わり、菊花全体において葬儀の簡素化などで市場規模は小さくなった上、いけばな需要の減少で二輪菊は市場価格が低下。 加えて市内生産者の高齢化や後継者不足も深刻になっており、旧新庄町内だけで40~50軒あった菊農家も数軒に。中でも二輪菊は手間とコストの面から、より作り やすい小菊などの生産に切り替わり、生産者は3~4軒ほどだという。また気温25度~30度が生育に適する菊において、連日30度を超える近年の気温上昇も生産離れの要因になっているようだ。 現在、消えゆく二輪菊を何とか残したい、地元の名産を知ってもらいたいという市民有志らによってこのたび「二輪菊プロジェクト」が立ち上げられた。7月には苗株の販売会が行われ、西川さんは240ポットの苗を提供し、活動に協力した。 「二輪菊を広めてくれる方々がいることがうれしい一方で、生産者がいないと二輪菊は絶えてしまう。ロスを限りなく減らせる栽培方法もある。若い菊農家に二輪菊を生産する魅力を知ってもらえるよう働きかけていきたい」と西川さん。 [関連記事] 消えゆく町の名産を知って「二輪菊プロジェクト」始動 去る7月4日、奈良県葛城市の葛城市役所玄関前で市の名産品である「二輪菊」の販売会が市民有志らによって開かれました。 詳細を見る≫ 旧新庄町域には「二輪菊日本一のまち」の看板や二輪菊のレリーフがはめ込まれた橋の欄干があり、往時の様子がしのばれる