目黒蓮さんが浴衣姿で出演しているビールのCMを見た。売り上げの一部を花火大会など日本の風物詩の継承に役立てるとのこと。その発想に心を動かされた。CMを見て、自分の記憶と重なったという声が多いのもうなずける。
日本家屋、浴衣、障子や縁側、風鈴、花火、うちわに蚊取り線香。そんな情景には、誰もが懐かしさを覚えるのではなかろうか。
私が子どもの頃は、縁側でスイカの種を飛ばし合い、朝から夕方まで山や海を駆け回って遊んだ。祖母の家では、吊るした蚊帳の中で眠るのが楽しみだった。ラジオ体操のスタンプが増えるだけでうれしく、母お気にいりの南部風鈴を軒先に飾り、すだれを吊るすと「あー夏が来た」と胸が弾んだものだ。夕方になると窓を開け、風鈴の音を聞きながら縁側で夕涼みをする。そんな夏の風景も、今ではすっかり珍しくなった。
夏休みが待ち遠しくてたまらなかったあの頃。そして今思い出すのは特別な旅行ではなく、そんな何気ない夏の日常ばかりだ。だからこそ、夏は思い出を作る季節なのだと思う。
今の子どもたちは、将来、何を懐かしく思い出すのだろう。便利さは、私たちの暮らしを豊かにしてくれた。しかし、子どもの頃に心を躍らせた夏の風景まで失ってしまっては、少し寂しい気がする。花火、風鈴、虫取り、ラジオ体操…。毎日でなくてもいい。夏のどこか一日だけでも、「あの夏は楽しかった」と何十年後かに思い出せる記憶を、大人が子どもたちに残してあげたい。
今年の夏が、誰かにとって『あの夏は楽しかった』といつまでも心に残る夏になりますように。
よみっこ編集長 朝廣 佳子
