景色に惚れたお地蔵さん 新日本妖怪紀行 2026.4.7 staff 石仏のお地蔵さん。お顔はもはや、よくわかりません 《連載》 新日本妖怪紀行|第34回 景色に惚れたお地蔵さん 天理市 萱生かよう町 全国には目や耳、歯など、様々な部位を治してくれるお地蔵さんがあります。そして、それらにまつわる昔話も数々伝わっています。今回は、そんなお地蔵さんで、しかも池から引き上げられた石仏です。池や川から拾われたお地蔵さんも多いんですよ。毎朝、前を通るお地蔵さんの由来など、改めて見てくださいね。 痛風の再発からお地蔵さんを探す 今から5年ほど前、初めて痛風になってしまいました。まあ、そのときは、すぐに治りましたが、人に聞くと痛風は再発するらしくて、この度、言われた通り再発してしまいました。この痛みは文字通り風が吹いても痛いというぐらい、がまんできないのです。 そこで痛風に効きそうなお地蔵さんを探してみたところ、腰から下の痛みを治してくれる「舟渡ふなと地蔵」を見つけて、さっそく行ってきました。 ぴくりとも動かない石仏 JR桜井線「長柄」駅を降りて山の方へ、足を引きずりながら歩くこと30分(たぶん普通なら15分弱)。この辺りは刀根早生とねわせ柿の名産地で柿畑が広がっています。舟渡地蔵は、その道端にありました。説明板もあり、その由来も書いてあります。まずは、このお地蔵さんの昔話をご紹介しましょう。 天理市観光協会によって立てられた説明板 その昔、夏の終わりになると萱生と竹之内の村では、村人総出で池を掘って魚を捕っていました。その池掘りの最中に、魚ではなく2体のお地蔵さんが刻まれた、大きな岩が出てきたのです。 村人たちはどうしたものかと相談して、やはり寺に収めるのがよかろうということになり、念仏寺の無縁墓へと、池から運ぶことになりました。 しかし、なかなか重いお地蔵さんで、力自慢の若者たちが担ぎますが途中で休憩したくなって腰を下ろしました。そこは奈良盆地が遠くに見えて、眺めの素晴らしい場所です。 さて、ひと休みした若者たちは念仏寺を目指して出発、と再び肩に天秤棒を担いでお地蔵さんを持ち上げようとしたところ、なぜか、踏ん張っても力んでも、お地蔵さんはちっとも上がりません。「そんなばかな」と代わる代わる担ぎますがびくともせず、その見晴らしのいい所にお地蔵さんは、じっとしているのです。 若者たちは、あまりに力を入れ過ぎたせいか「痛い!」と一人が悲鳴を上げ、次々に「痛い」「腰が痛い」と言いながら村へと逃げ帰りました。これはまさしくお地蔵さんの祟たたりに違いないと村人たちは思い、仕方なくその場所でそのままお祀りして、お坊さんを呼んで供養しました。すると、あれほど腰痛で苦しんでいた若者たちはケロリと治り、元通り元気になったのです。 それから、このお地蔵さんを「腰痛なおしのお地蔵さん」と呼ぶようになりました。 刀根早生柿発祥の地の顕彰碑 説明板にも書いてあります お地蔵さんもお寺の墓地より、眺めのいい場所で、みんなと触れ合いたかったのでしょうね。ひょっとしたら昔は、もっと高台にあったのかもしれませんが、今でも風通しよく、気分よく鎮座されているようです。 説明板にちゃんと「今も腰から下の病気には、このお地蔵さんのご利益が受けられるとか」と書いてあります。 私も、痛風が治ることをお願いして駅へと向かいました。なんとなく足が軽くなったような……。明日になって治ってたらいいなあ〜。 すぐそばが柿畑。遠くに奈良盆地が見えます 文・写真提供 竹林 賢三 TAKEBAYASHI KENZO YouTubeにて「ちくりんの妖精妖怪教養講座」配信中! *掲載内容は2018年05月に取材したものです