〈東吉野村〉村に移住した英国人がデザインする東吉野と木の未来/Felix Conranさん 2025.7.9 鮎 奈良で活躍する“奈良もん” 今回は、建築や家具などのデザイナーとして活躍する『Ha Partners 』の代表 Felix Conran(フィリックス・コンラン)さんをご紹介! 近年は国内外から多様なクリエイターが移住してきているという東吉野村。鷲家・小川地区を拠点に活躍するフィリックス・コンランさんもそのうちの一人だ。 建築や家具などのデザイナーとして活躍するフィリックスさん。英国発の高級インテリアショップ「ザ・コンランショップ」の創業者 テレンス・コンラン卿を祖父に持つ人物だ。 東吉野村へ移住する以前は、英国を拠点に「Maker&Son」という家具会社を立ち上げ経営していたが、2022年に会社を売却。都会を離れ田舎に住みたいと、パートナーのエミリーさんと共に3か月の日本旅行に訪れた。 九州をはじめ日本各地を巡るなか、東吉野村へ訪れたのは偶然だった。初めての訪問でこの場所に運命を感じた2人は、再度の訪問を経て移住を決意。2024年3月に移住した。その翌月にはデザインスタジオ「Ha Partners(ハーパートナーズ)」を設立した。 年輪の見える木口を上面にした床材 同社では吉野地方で産出される木材を使用した家具のデザインやリノベーションなどを手掛ける。本年は新たに、吉野杉を使用した一風変わった床材を制作した。 一般的な板目材ではなく、年輪の見える木口を上面にしたタイルなのが特長。木の歴史を感じさせるデザインに、杉のやわらかな風合いと良い香り。加えて製材時に1本の原木から出るロスを減らした上、板目材に比べて摩耗しにくいという耐久性も魅力だ。 たとえ摩耗しても、全面を張り替えることなく表面を手入れすることで長く使用できる 無垢材ならではの良さもある。またタイルにしたことで管理や運搬もしやすくなり、海外を含む長距離輸送にも対応できるという。 吉野地方の林業においてはコスト面において、安い輸入木材にシェアを奪われている現状が長く続く。これに対して、他にはない良質な吉野材ならではの付加価値を創出し、林業課題の解決を目指すのがフィリックスさんのミッションだ。 「東吉野村では、自然だけでなく良い人にも囲まれて、いろんなサポートを受けながら良い日々を過ごしている。今後は床タイルを一般住宅に導入できるようアプローチするなど、強いビジネスにしていくことで村に恩返ししていけたら」とフィリックスさん。 彼のデザインに吉野の木々とその未来はどう描かれていくのか、今後も注目したい。